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"たっちゃん"と約束した日から二ヶ月が経った。
明日の午後にはもう私はこの街にはいない。

姉「おい、お前。あの遊びに来てくれた子達にはちゃんと さよなら をしたんだよな?」
私「なんでそこで してない と思ったのか、ぜひ聞きたいね?」
姉「……なんかあんた生意気になったよな~」
私「ふぅん、そう」

少しだけ苛立っている姉の顔を見ながら
私は素っ気なく答えた。

――どうかな。
興味のない話をされた時のあの二人のように私は出来ているだろうか?

そのような疑問を持つも、それに応えてくれる人はいない。

姉「そういえばお前ってコレどうするん?」
姉がコレと言って持っていたもの―"たっちゃん"から貰ったシーグラスの…。

私「あぁ、後で返しに行くよ」

自分が持っていても仕方ないし
何より私がそれを付ける事はもう二度とこないのだから
だったら本当に似合うべき人に使ってもらいたい。

姉「良い街だったね」
私「色々あったと思うけど、そうだね。良い事の方が多かったとは思う」

"恰好良さ"や友達というものを少しだけ知れた。
ゲームもまたやれるようになった。
……幸せな記憶も増えた。

姉「あの子、可愛かったね?」

姉のその言葉を聞いた瞬間、胸が一瞬だけ驚いた。
私「"たっちゃん"? 高木君? どっち?」
姉「アンタの頭に最初に浮かんだ方」
私「……どっちも素敵だったよ?」

"みたいね"
と姉は嬉しそうに笑って、私の横顔を眺める。

姉「次の街や学校も良いところだと良いね」
私「……まあ、お互いにね?」
姉「そうだな~」
私「でもまあ、大丈夫でしょ」

そもそも姉はそういうタイプだと思っているし
姉や"たっちゃん"、高木君が心配してくれた私の中には
あの二人の強さがあるのだから。

―――
――

この時の私達、家族はまだ知らない。
この後の転校先で私は大きく歪み、一般的なレールから外れてしまうことを。
そして自分の中に凶悪な存在がある事を。

私「んじゃ、それ返しに行ってくるかな」
姉「おう、ちゃんと行ってこい」

私は姉からシーグラスのアクセサリーを受け取り、靴を履いて家の扉を開ける。

「では、行ってきます~」

END