「あ、このゲームやってみた? すすめないところあるんだけどさ」
「それはまだかな? 二人でやれば行けるさ」

それから姉とゲームを楽しんだが、ゲームに対する真剣度は姉と違ったのをこの時、知ったのだと思う。
姉は進めないところがあると、飽きてやめる。
私は進めなくても、何度死んでもクリアできるまでは絶対に続けた。

「……アンタ、何時間やる気なの? 少しは外行ったりすれば?」
「いや、時間ないし…」
「…………」

姉は私の言葉をどう受けとったのかは知らない。
けれど、それ以上は何も言ってこなかった。

「そういえばアンタさ。三人で遊ぶのっていつよ?」
「……決まってないけど、そのうち遊ぼうと思うよ?」
「なら、日にち決まったら教えてよ」
「うん。ごめんね」
「……いいけどさ」

私が"たっちゃん"と高木君と遊ぶ日。
姉はこの部屋を使えない。
正確には使える事は出来るけれど、私達が邪魔になるから 使わない と姉は決めているのだと思う。

「……姉ちゃんは大丈夫なの? 転校」
「あ~……まあ、アンタよりはね」

アンタより?
なんでそこで私が出てくるのだろう?
別に大変な事なんて何もないのに。

「……別にそこまで大変じゃないけど?」
「そうかも…? でも大変なのはきっと変わらないよ」

荷造りの事だろうか?
それだったら私より姉ちゃんの方がずっと大変だと思う。
私は姉の散らかしまくった机の上を見ながら、そう感じた。

-----------------------------------------------------------------------------------

ある日の学校。
教室でみんながいつものように騒いでいる。
もうこの教室に"からかい"や"いじめ"はなくなっている。
それもそう以前の担任は辞めて、違う先生がここのクラスをみているから。
違う先生は堂々としていて、何かあればすぐに駆け付けて解決する、そんな人だった。

「格好良いなぁ」
女子達の会話に混ざってみると、ある女子生徒―アケミがそう呟いた。
……アンタ、彼氏いるじゃん。

そう思ってると"たっちゃん"が私の元へやって来て後ろから抱き着いてきた。
「……たっちゃん、きついんだけど?」
「いいからいいから。あ、それと今度の土曜日、三人で遊びませんか?」
「……なんで最後だけ敬語なの」
「ムイの真似ですよ、真似」
「……真似しないで下さいね?」
"たっちゃん"は何も言わず、私の肩に頭をのせた。
「……どうしたの?」
「……いや、うん。大丈夫」
「……ふぅん?」

この時はまだ分からなかったが、今なら分かる。
"たっちゃん"は色々、頑張ってくれていたんだな、と。
だって私が転校する事をもうこの時には知っていたんだから。