※昨日からの続きになります。

友「ムイはもう自分の中で大切って感情を腐らせているから大丈夫なんだろう」
私「大切じゃなかったことなんてないしね、それに…」
私「大切だから手元に持っておきたい、大切だから守りたい、大切だから手放さないといけない、大切だから早く"手遅れ"にしたかった。答えってひとつじゃなくていいんだもの…ここで本当だったのは最初以外の3つ…それを腐らせたというのであれば、それで合っている」
私「その結果、私は引き摺る事を覚悟したし、相手は幸せになった。問題はなにもないはずよ…」
友「…ムイは自己完結するからなぁ。思考ロジックがそもそも違うから参考にならない」
私「だって相手の答えは聞けないもの。それに、貴方だって勝手に決めたじゃん? 別れる、より戻せない、戻さないって、それを貫いているでしょう? だったら自己完結だよ」
友「この世は自己完結で成り立っている!」

なら、私達は一緒よ。
何も変わらない。

友「本当に怖いのは蓋を開けた時に何もない事なんだよ。本当は整理し終わってて正直そこまで重要ではなくなったと思えるような…だとしたら大切に思おうとしないと重要ではなかったって事で…」
私「それが逃避の自己完結って分かってる?」
友「逃避ならいい、正直残ってないんだよ。あんなに特徴的だった声も…よく思い出せなくなってる。
よく笑って泣いてたのは憶えているけど‥写真を見ても思い出せなくなってきてる」
私「…そのまま全部忘れてしまっても良いのね? って事ですよ」
友「忘れたくないから連絡したくなる…その時点で本末転倒なんだよ」
私「……それが好きって事でしょう?」
友「好きなら忘れない!ムイはあの人の事を今でも思い出せるだろ…」
私「それは忘れてるんじゃない、余裕をなくしてるの、わざと」

それで考える時間をなくしているだけ…

友「充電ってくっついてきた事とか思い出せるだろ?」
私「白が似合うね、って恥ずかしそうに笑って言った事。私がゲームでクリアできないところを何度もやらせて「ほら、出来たじゃん」って得意気になって言ってくれた事、告白した時、呆れつつも実は照れてて「こんなのどこがいいの?」って訊ねて来た時の事、別々の学校の行く事が決まった時「楽しかったよ、君と遊ぶの」って寂しそうに言ってたところ、付き合って「どこがいいの? こんなの…」と私が言うと笑って「分から~ん、なんとなく」って顔真っ赤にしながら答えてくれた時の事、初めて携帯電話を使っているところを見つけられて「電話番号、教えろ~!」って真剣な顔をして言って来た時」
友「……すごいな」
私「すごくない。仕草も何もかも思い出せます。別に好きだから全部を憶えているわけじゃない。忘れたくない意地がある、それだけよ」
友「充分じゃん」
私「と思う反面、そこまでしないと思い出せないのか。それは本当は好きじゃなかったからなのか。とか考える時もありましたよ」
私「人間って錯覚できるじゃん?自分の事でも、思い込みで」
友「うん」
私「だから「錯覚であったとしても、想っていきたいか」・「錯覚かもしれないから忘れるか」の選択で私は前者を選んだだけの事」
友「なるほど、ムイらしい」
私「錯覚かもしれないけど、私はこれで良い。これが良い、か」
友「袋小路に率先して向かう」
私「でもその袋小路も突破した…一生引き摺るつもりだったのにね…」
友「無理だよ…」
私「そうだったみたい」
友「よくない言い方だけどさ。次の人と付き合う事で、認識する事はあるんだと思う」
私「知ってる…私でいうところの「手遅れ」にしたいんだよね?認識はするけど、もう付き合っているんだからで片付けられるように…」
友「腐らせているっていうのはそういう事、情報は更新され続けるからね」
友「欲張りなのに何も手に入らないのは、そういう事なんだろうなぁ」
私「貴方は幸福感を少なく感じる人で、幸福の敷居が高く、だから満たされ難い」
私「まあ幸福感が強いから問題になるって事は当然、ありますけどね」
友「敷居高いかなぁ?」
私「高い…でも大抵の人はそうですよ」

続く。