「ムイみたいな人は秋葉より中野に行った方がいいと思うよ」

約一年前ぐらい前。
ネット友人がそんな事を言ってくれていたのを思い出す。

―中野、か。
今まで中野に行く予定なんてなかった。
でも今日は時間もあるし、暇潰しに行ってみよう。
そう思った。

うわぁ…「まんだらけ」ばっかり…。
少し店内を見渡してみるも、私の欲しいものはあまりない。

―なんもないじゃ~ん。
でも案内板を見ると現在いる階の他の階にもオタクが好むお店があった。

ここ、か?
お店に入り、あれも欲しいこれも欲しい。
合わせて2万円ぐらいか?

欲しいゲームばかりで財布と長時間相談しつつ店内をうろつく私。
ふとお店のショーケースに目が移動した。

おっと…これは。
プレミアゲーム達じゃないか。
あれはもってる、これは持ってる。
それはない、そもそもなんだあのゲームは?

それぞれ8000、22000、35000…本当に知らないゲームもあった。
その中で私は出会ってしまう。
幸か不幸か。

「書淫、或いは失われた夢の物語」
お値段は15万円。

先程見た、二万円分のゲーム達は諦めよう。

私はすぐに店員さんを呼び、状態を見せてもらう。
いう程、痛んでいないか。

「皆さん、よく状態は確認してくれるんですけどね…」

店員さんは笑う。
そりゃそうだ、15万でひとつのゲームなんて買うわけないでしょう?

「状態は分かりました。ありがとうございます。
じゃあこれ買っても大丈夫ですか?」

「…え、お買い上げですか?」

はい。
少々割高だけど、いつか買うモノだし。
「いつか」だともう探して見つける事は出来ないと思うし
何より、現在より高くなる可能性があるのだから見つけたら買っておく方がいいと考えた。
ネットだともうほぼ探せないと思っているし。
最悪、売れば元は取れるはずだ。

レシートに収入印紙を貼られて、私は手に入れてしまった。
あの伝説のゲームを。