そんな私と姫さんの関係をよく思わない人間がいた。
…そう、私の姉だ。
私が入院して1日、たった1日だけ母が姉を連れて部屋を訪ねて来た事があった。

姉は私の傍にずっといてくれた。
手も繋いでくれた。
なんかふわふわしたもの(多分、ぬいぐるみ)をくれた。
でも、私はそんなものよりずっと姫さんと話したり手を繋いだり抱き合ったりしていた。

姉は泣いて怒って、姫さんに大きな声で言った。
姉「……大嫌い!」

病室にいた私は勿論、お母さん、姫さんはびっくりしたと思う。
……明るい性格とはいえ、姉が誰かに対してそんなハッキリと自分の気持ちをぶつける事は今までなかったと思うから。

母は只管に姫さんに謝った。
そんな母親に対して姫さんは表向き「大丈夫ですから」とまるで何事もなかったかのように穏やかな声で話していた。

その1日だけで、姉はもうお見舞いに来る事はなかった。

母と姉が帰り夜中になると、姫さんは笑いながら言った。
「ムイのお姉ちゃん、面白い子だねwww」
大嫌い、と言われたのに面白い…???
多分、その時の私はなんともいえない顔をしていたと思う。

それから暫く、姫さんは私に姉の事を質問してきた。
でも目がまともに見えない私は姉の顔、仕草が分からないし、その人間性も分からないでいた。
時々、優しい?? それ以外は怖い…??
そんな感じだった。

あれから数十年が過ぎた現在でも、姉が何を考えているのか全然分からない。
自分の気持ちを閉ざしている感じだから。
……まぁ、私達家族に話せるほど信用、信頼されていないんだろう。

姫「ムイはあんな風に気が強い子になっちゃ駄目だからね?なるなら芯の強い子になりなさい」
なんて、言われても当時の私にその言葉の意味なんて分かるはずがなく、でも憶えておく事にした。

ついでに言っておくと、私の姉と姫さんは未だに仲が悪い。
お互い良い人間なんて思っていないみたい。
女性としての相性が抜群に悪いんだろう。

……あ、女性との相性の事で言えば姉は母親とも仲が悪い。
特別なきっかけ……なんてものは私が見てる限りなかった。
私には結構、優しくしてくれるんだけどね、二人共。

姫「でも、まあ一人っ子よりはマシだもんね」
言って。
姫さんは私の頭を優しく撫でる。

私「……姫さんにはいないの?」
姫「うん、いないかな」
私「…そっか」
私はまた姫さんに抱き着いた。

姫「あー……駄目だなぁ」
私「……なに?」
姫「はい、終わりっと」
ほぼ強制的に姫さんは自分の身体から私の身体を離す。

私はこの時、少しだけ姫さんを変だと思った。
いつもの時のように、夜の時のように姫さんはしてくれなくなった。
でも、変わらず姫さんは夜ひとりで泣いている事が多かった。

一度。
たった一度だけ。
夜の病室で泣いている姫さんのところに行こうと頑張って近付くと
気付いた姫さんが震えた声で言ったんだ。

私にむかって。
「お願い…来ないで」と。