「さて、と。先輩、ちょっと話したい事があるんですけど?」

後輩である彼女は私の方を真剣に見つめている。
……あ、これは逃げられないな。
そう悟った私も真剣に話を聞く姿勢をとる。

「……なんですか? 突然に」

えっとですねー…と彼女は少々困った顔をする。

「外れてたら申し訳ないないんですけど、こっちに来た目的ってAさんの事と友人さんとその恋人さんのですよね?」

今度はもう開き直ったのか彼女はいつものように微笑みながら口を動かした。

「……えっ…」

頭が真っ白になった。
まさか気付かれていたとは…。

「その顔を見ると、当たりかぁ。いやまあなんとなくそうじゃないかなぁ?って思ってましたしね~……あれかぁ。元恋人さんであるAさんとヨリを戻すとかじゃなくて健在かどうかの確認。そして”こちらに引っ越しさせた友人さんに責任を感じ行く末を見届けたい、とかですか?」

さすが腐れ縁…いや違うか。
付き合いが長くても人を見ない人間なんて沢山いる。
彼女はよく人を見れる人間…そういう事だ。

「……まいったなぁ。……そうね。Aは鬱病だったからね。変な事をしてなければいいと思って……とはいえ私はAを裏切ってるからなぁ…気にするのも烏滸がましい話なんですよん。友人さんの事はそうだね~…私が友人に対してやった事は間違いなのかもしれないんだよね~まだ全然、先の事は分からないのだけど…まあ最悪、責任ぐらいは取る覚悟ですなぁ」

なんたって人生を捻じ曲げたようなものだからね。
友人が迷っていた時に私が行動を起こして、答えを無理やり出させた感じ。
これも私の自分勝手な考えが起こしたといっても間違いではない。

「大丈夫ですよ。先輩の考えてやった事ですから」

後輩の優しい言葉、そして何より笑顔が眩しい。

「あ~…駄目だよ~? 私なんか信用、信頼しては……みんなが考えているほど私は良い人では絶対にないのだから」

それは事実。
そして本心から出た言葉だ。

「でも私はいい方向に行ったと思ってますよ?」

後輩はそう言ってくれているけれど、人間は知らないでしょう?
人生の分岐点があって、選択してない方の道の結果をさ。