数十分の移動を経て、無事に我が家に辿り着く。
家の中では姉が不愛想な顔をしながら話し掛けて来た。

「あぁ、アンタ。今日、退院だっけ?」

姉自身、まったく興味がないであろう話を私に振ってきた。
姉という立場を考え、一応下である私の事を気に掛けてましたアピールなんだろう。

「うんー…こっちは? 変わりなしだった?」

私が言った”こっち”とは勿論、我が家の事だ。
まあ何かしらがあったところで下らない事には変わりはないのだけれど。

「別に? お母さんが面倒くさい以外は」

母と姉は相性が悪く、性格は勿論、人間的部分も大きい理由となっている。

「っと…ちょっと電話」

ん。
と姉は適当に返事をして、私は久しぶりの自室に戻り携帯電話を手に取り電話に出る。

???「もしもし?」

瞬間。
私は驚く。

この声―…Mか。

「もしもし? M? どうしたの? というかなんでこっちの番号を知ってるの?」

言っておいて。
私は自分の思考の未熟さに呆れた。

Mがなんで私の番号を知っているか?
そんなもの、Aに教えてもらったに決まってる。

「あー…番号はAから。ってか何? そっちは別れたん?」

「…さぁ? 分からない…けど、まあAが私以外の誰かと付き合って幸せならそれでいいんじゃない?」

「めっちゃ好きだったくせに…よく言うよなぁ。そんな事」

「…うん? 私がAをすごく好きなのと、私のさっきの言葉は関係ないよ?」

「じゃあ確認するけど、本当にいいんだね?」

その言葉に私は戸惑う事なく、ちゃんと答えた。

「どうぞ? 言ってしまえば転校生だった私より小学校からの付き合いである貴方達の方がずっとAを知ってるだろうからね」

わかった。
とMは言ってそのまま電話を切った。

―本当にいいんだね?
Mのその言葉が頭から離れない。

会いたい気持ちも。
好きな気持ちも当然ある。

でも私が気持ちを殺す事によってAが幸せになるのなら。
喜んで私はそうするだろう。

本当、一体何に影響されたのか分からないけれど。

それが初めて、知った。
私の「好き」らしいから。