私の友人は有能である。
昔から頭も良くて、性格も良い。
運動神経も良かったかもしれない。

それに比べて私は無能である。
勉強という勉強なんてやってないし、性格も綺麗に歪んでいるし。
運動なんてした日には全身筋肉痛だ。

そんな友人と私を比べて唯一、友人より経験があるのは恋愛だった。
でも、大人になったら私なんかより有能の友人の方がモテるんだろうなぁ、とか思ってたが、そんな事はなかったらしい。

有能な友人から連絡があった。
別に喧嘩したとかではなく、成人したら自然と疎遠になっていた私と友人。
結婚した挨拶かな?

そう思って電話に出るとお互いに盛り上がった。
そこに結婚の「け」の字もなかった。

「早く結婚しなよ~お金稼ぎまくってるなら余裕でしょ~(笑)」

「いやいやいや、お金あっても中身大事じゃん~ムイこそどうなのさ~?(笑)」

「私…私かぁ~。私は別にゲームあれば、結婚しなくていいんじゃないかなぁって」

「とかいって、昔から寂しがりやのくせに」

「まあ正直、寂しいっちゃ寂しいけれど、こんなヤツ相手にする方がどうかしてると思うし」

「ほほぉ…相手がいれば結婚も夢ではない、と?」

「ん~…どうだろうか? 自由度によりますな~」

「ムイは学生時代から見てたけど、本当に自由だからねぇ…」

「…して、人生は順調かい?」

そしてお互いに話し合う。
まあ生存確認や現状の不安などが主な話題だったけれど。

「ほんと、学生時代に友人作っといて良かったよね」

私は友人に言う。

「こっちはその点、失敗したけどね。あ、でもムイはネット友達とかともうまくやってそうじゃん?」

「うん。そうだね。現実の友人、ネット友人、最近関わってくれた人、みんな変わらずに大好きだよ~」

「変わらずに、か。そういうところが良いところでもあり、恋人がいたら不安にさせるんだろうね」

「…ん。友人に対する好きと恋人に対する好きは違うでしょ?」

「まあそうだけど…もうちょっと素直になった方が良いと思うよ。いま言ってくれたみたいにさ。みんなに好きって言ってみな?」

「え…うん。絶対に嫌だ」

「…ですよね~」

確かに前よりは丸くなったと思うけれど、そこだけは昔と変わらずあんまり言いたくないのだ。
本当、恥ずかしいから。