すごく不器用なくせに、苦労もしているくせに。
それでも後で利益が返ってくる事を期待して、面倒を見ないでいいはずの他人のために行動している友人。

…憎めない人ってこういう人の事を言うんだろうなぁ。

私達の相性は最悪だ。
傍から見ても、そう理解する人も多いだろう。
でも不思議と私達は憎み合ったり、呆れ合ったりなんてしていない。
顔を合わせれば口論になる場面はとても多いのだけれど。

珍しく、相性最悪な二人―私と友人で飲みに行った。
そこで出てくる話題はとても真剣なモノばかりだった。

「聞こえは悪いんだけれど、ムイは実験台なんだ」

私は少しだけ笑って頷いた。

「自分はムイよりまずい人間と今後、関わらないといけないからさ」

それは友人ではなく友人の家族だ。

「…大丈夫そうなの?」

私は少しだけ考えてそんな言葉を言った。

「いや正直、まずいしやばい。解決策が全然、分からないんだ」

友人は本当にいろんな意味で苦労している。
何度も挑戦し諦めず頑張っている人間を「相性が悪い」ってだけで放っておけますか?

答えはやっぱりNOだった。

「やるだけやろう? 私もやるだけやるからさ」

「そうな~やるしかないよなぁ~」

私達は二人笑い合って、お酒を飲んだ。